2008年04月14日

号令を鳴らすのはギター

「なー、兄貴。オレどうすりゃいいんかなぁ」
「何がだよ」
「雅[みやび]のこと」
 浩太はギターを抱えたまま、ベッドに寝っ転がった美紀の方を見た。
「何かしなきゃいけねーのか」
「んー……いや別にしなきゃいけないってわけじゃないんだけどさ。このままこう、どこにも落ち着かない感じでいるのってなんかヤなんだよ」
「ふーむ……」
 浩太は少し考えて、アンプに繋いでいないエレキギターで和音を弾き始めた。
「キライー、キライー、Love You〜」
「誰がー、誰が、Can't be alive without you〜」
 一度バンドで合わせた曲だ。原曲と違ってやたらゆっくりなテンポだが、美紀もすぐに合わせて歌い始める。
「知らないわ、そんな魔法、想いは伝えたら壊れちゃう」
「アナタとは、違うから、人の心まで簡単に、盗まないで」
 ギターの和音で締める。
「……兄貴、これ歌いたくなっただけだろ」
「歌ってみたら全然今の状況と関係なかったな」
「っの野郎……!」
 はっはっは、と快活に笑った。
「人が真面目に話してるってのに……」
「一緒になって歌ったくせに」
「……」
「しかし、真面目な話、状況を変えたいのか?」
「んー……うん」
「じゃあ押し倒せよ」
「っだから真面目な話をだな――」
「いや、真面目な話。俺も寛美に押し倒されたし」
「……マジで?」
「おう、マジで。わりと前だけどな」
「どんな状況だったんだよ」
 浩太はその時のことを思い出すように、少し間を取った。
「ここで、ベッドに並んで座ってギャラクシーエンジェル見てたら3巻が終わったとこで急に押し倒された」
「何なんだよその状況!突っ込みどころ多すぎてどうしたらいいのかわかんねぇよ!」
「順番に突っ込めよ」
「なんでギャラクシーエンジェル見てて押し倒すとかになるんだよ」
「そりゃ寛美に訊けよ、俺が押し倒したんじゃねーんだから」
「で?」
「どうした急にって訊いたら」
「うん」
「コクられた」
「まだ付き合ってなかった頃かよ!」
「でなきゃお前の参考にならねーだろうが。なんで俺と寛美のラブライフをお前に語ってやんなきゃなんねーんだ」
「いやそりゃそーだろうけど……」
「それで今や大学内ベストカップル賞だ」
「ちょ、ちょっと待て、なんでお前彼女でもない女の子部屋に連れ込んでアニメ見るんだよ!」
「いや、あいつギャラクシーエンジェル見たことないっつーから」
「貸せばいいだろ!」
「あいつんち VHS のデッキねーの」
「……なるほど」
 美紀は突っ込み疲れてぐったりとベッドに突っ伏した。
「うあー、どうしよー」
「テメェ、お兄様の実体験に基づくナイスアドバイスは華麗にスルーか」
「いくらオレでもそんな異常者と同じ手段は取れねぇ」
「誰が異常者だ誰が」
「いろいろ間違いすぎだろうが!」
「どこがだ。あいつは俺があいつのこと気に入ってるのわかってて一番確実だと思うようにやったんだろ?お前もそうすりゃいいだろうが」
「それはまぁわかるけど、だからそこでどうして押し倒す一択なんだよ」
「俺から見りゃそれが一番確実だ。ちなみに押し倒して耳元でささやくのがベストだな」
「ほんっとに兄貴から見てそれがベストなんだな!?」
「ベストだ。断言する」
 重々しく頷いて、浩太はギターを構えた。
「一万年と二千年前からあ・い・し・て・る〜」
「……ほんっとに考えたんだろうなお前」

+with the song [魔理沙は大変なものを盗んでいきました] by IOSYS
+and [創聖のアクエリオン]+

posted by alohz at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | [短編]恋愛模様 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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